百人町

唐十郎が二〇一〇年の世に問う、新宿高架下幻想群像劇。


唐組 紅テント

舞台は新宿・百人町のしがないラーメン店・〈味龍〉。
そこに勤める出前持ちの青年・丁屋は、オカモチ三丁持ちに挑戦中。
店長のシナチク、同僚の鳴門、腎臓を患う後輩・津君と、つましい毎日を送っている。
しかしそのラーメン店は、夏にはなくなってしまうことが決まっているのだった。

ある日、看護婦たちのコーラスに乗って、近所の大病院の院長・百足(ももたり)が現れる。
彼こそは〈味龍〉を買い上げつぶしてしまう張本人。
百足は買い上げ前に店を片付けてしまう。そして店内に病院の中庭が仕立てられ、
丁屋ら〈味龍〉の面々は呆然とする。
病気の弟を思い、注射器持参でそこに居合わせた津君の姉・流里江。
彼女と、不思議な言葉を口にする、〈味龍〉のお得意・家具屋の丈らが丁屋たちを励ます一方、
百足の元には病院の出資者であり、競走馬のオーナー・立川夫人が
ビロードの鞍にルビーをつけた木馬連れで現れて百足の尻を叩く。
謎のコピーライター・乱々歩次郎が、
経済の落とし穴を独自のステップで跋扈し、変転してゆくラーメン店・〈味龍〉。
非常な運命の大河を眼前にした時、青年の瞳はわずかな糸をたぐって、
ルビーが沈んだ新宿・百人町の海に潜海する。
(チラシより転載)