ハンサム★スーツ

ハンサム★スーツ(2008) - 監督: 英勉、 出演: 谷原章介塚地武雅北川景子

亡くなった母の定食屋を継いだ大木啄郎 (塚地武雄 (ドランク・ドラゴン)) は、 豚郎とあだ名される程のブサイクだが、 料理が得意で心の優しい男だった。

ある日、 安くてうまいと評判の啄郎の店に、 美少女の寛子 (北川景子) がアルバイトの募集を見てやってきた。

寛子と一日に何度も目が合ってしまう啄郎は、 お互い気があるのではないかと思い込み告白をする。 しかし 「わたしのどこが好きですか」 と聞かれ、 見た目のことしか言えず、 ふられてしまう。

そんなある日、 啄郎は着るだけでハンサム (谷原章介) になれるスーツを手に入れる。

そのおかげで街中の女性の視線を釘付けにするだけでなく、 モデルにまで抜擢され、 トップモデルの美女のハートも手に入れられそうになるのだが……。

ブサイクもハンサム・美女も、 外見で判断されちゃうけど、 どちらも中身を見てほしいと思ってるし、 中身がが大事という話。

塚地が活躍するのかと思いきや、 谷原章介がドタバタのコメディをするという楽しい作品。

残念なのは北川景子があまりきれいに撮れていないところ。 もっとも彼女の魅力は、 個人的意見だが、 がちがちにメークして澄ましているところではなくて、 ナチュラルメークでちょっとくしゃっとした笑顔をするところだと思っているので、 謎の美少女という設定が納得できなかったのかもしれない。 そういった意味ではモップガールの彼女は魅力的でした (そういえばモップガール谷原章介と共演してたな。)

それと彼女が啄郎の料理を食べるシーンは、 おいしいですとか好きですとか言っているにもかかわらず、 あまり美味しそうに見えなかった。 なんか無機質な固形物を無理に嚥下している (わざと難しい単語で表現しました) ようにしか見えない。 のどが痛そう。 二年前に 「とんねるずのみなさんのおかげでした」 の 「食わず嫌い王決定戦」 で、 小動物が頬袋に溜め込むような食べ方をしてたけど、 その時の方がまだ美味しそうに見えたな。 その食べ方を相当批判されたらしく、 数十万円するマナー教室に通ったそうだけれども……。

もう一つ付け加えるなら、 北川景子は演技パターンが少なすぎる。 動きが少ない役なのは仕方ないけど、 何かというと左上に目をやってまた正面の相手を見据える、 あるいはうつむくの繰り返し。 あとラストシーンで、 持っているものを説明するのにつるんと撫でて一言言うのは芝居として下手すぎる。 そんなことするやつ現実ではいねーって。 そこは逆に左側に持っているんだから、 目だけで左を見てから一言言うくらいでいーんじゃないの? 監督はちゃんと演出してあげて!! でも、 「モップガール」は素人臭さは残るものの、 いい演技してたと思うんだけどなあ。

もっとも、 演技が下手なのは他にもいるのであまり目立たないかも。 佐々木希が下手なのは CM を視ていてもわかっていたけど、 衝撃的だった。 台詞をなぞるってこういうことだったのね。 でも、 山本裕典は下手だけど体当たりの演技をしていて好感が持てた。 何か台詞を言うために前に出てきて、 言い終わったら後ろにはける芝居は失笑を禁じ得ない。 が、 いい動きをしているので、 つかこうへいの芝居にでも出たら阿部寛みたいに化ける可能性はあるかも。

それから、 谷原章介は大活躍だった。 どう見ても中身が塚地武雄なんじゃないかっていうドタドタした動きが素晴らしい。

演出面で言えば、 色彩設計の見事なこと。 「どですかでん」 ほどではないが、 啄郎の周囲の原色ばりばりの衣装やセットがとてもきれいだった。

ただそのせいか逆に、 啄郎の現実の世界がとても楽しそうに見えてしまうのね。 なんで現実から逃避して違う世界に行こうとするのか共感が持てない。 その上ハンサムになって入り込んだモデルの世界があまり魅力的じゃないのね。 いちおう美女と金という餌はあるものの。

でもそのトップモデルの美女にしてもハンサムな啄郎の上辺だけを見ているのではなくて、 ちゃんと内面も見てほれているように思ったのだけど。

それにハンサムの世界からブサイクに戻ろうとする葛藤が今ひとつ見えてこなかったのも、 ちょっと自分の納得力が弱いのかなあ。

とはいえ、 とても楽しい作品でした。

それと、 カンベちゃん(神戸浩; お弁当を作ってもらってる人の役)の元気な姿が見られたのがよかった。 「無能の人」の怪演が忘れられない。